3 円熟期
97年で一旦X JAPANの活動に区切りがつく頃、ヴィジュアル系ロックシーンは世代交代の時期を迎えます。このあたりからが私の得意分野でもあります。
96年の「グロリアス」に続き、98年までシングルを立て続けにミリオンヒットさせたGLAYと、96年の「flower」が大ヒットし武道館公演を成功させたL'Arc?en?Cielがこの時代の二大巨頭として活躍します。当時はGLAY派かラルク派のどちらに属すかで意見が分かれたほどです。私はGLAYの「REVIEW」というこれまた大ヒットしたベストアルバムを多分に漏れず購入はしたものの、L'Arc?en?Cielのほうにどっぷりとハマっておりました。この頃になるとXの時代のようにヴィジュアル系ロックを異色のものとする風潮は薄れてきており、他のJポップと並ぶジャンルとしてヴィジュアル系が広く世間一般に受け入れられるようになった時代でもあります。ただ、96年の時点ではまだ「ヴィジュアル系」という言葉はなかったように記憶しています。この後1?2年でヴィジュアル系は大成し、そして衰退していくのですが、それについては順を追って解説していきます。
L'Arc?en?Ciel「True」のジャケット
GLAY「REVIEW」のジャケット
さてL'Arc?en?Cielについてですが、彼ら(特にリーダーのtetsu)は頑なに「自分達はヴィジュアル系ではない」と言い張っています。この主張の裏には、tetsu側の解釈として「ヴィジュアル系=見た目だけで勝負しているバンド」という偏った見方があり、世間もまたそうした意識で「ヴィジュアル系」という用語を用いているのだろうと考えているようなのです。L'Arc?en?Cielはしっかりとした音楽性をもとに活動しているので、ルックス重視のバンドだと思わないで欲しい、という思いがあるのでしょう。ただ、私個人としては、ヴィジュアル系だからといって必ずしも見た目だけが重要ではなく、むしろ演奏力や楽曲のクオリティがヴィジュアルに伴ってこそのヴィジュアル系だと考えているので、L'Arc?en?Cielもヴィジュアル系である、またはヴィジュアル系であったとしてよいと思います(このように言うと熱狂的なラルクファンには叱られがちですが)。また、「ヴィジュアル系と呼ばないで欲しい」という発言は、裏を返せば自分たちのヴィジュアルに自信があるということだとも言えます。デビュー当初、hydeの中世的な美しさを前面に押し出したプロモーションビデオを打ち出したり、他のメンバーについてもメイクを施していたりといったことから、いわゆる「ふつうのロックバンド」と見た目において差別化を図っていたのは確かな事実です。
方やGLAYは「ヴィジュアル系か否か」という点にそれほど重きを置いていないご様子です。彼らの場合は音楽自体に自信があるゆえ、見た目云々でとやかく言われることに興味がないといった感じでしょうか。ここに関してはあまり詳しくないので割愛させていただきます。
2009年現在の立ち位置としては、GLAYの人気は下火と言わざるをえない状況で、EXILEとコラボレーションする等の若干趣旨のわからない活動から一部ファンの間で「迷走している」と言われています。一方のL'Arc?en?Cielはというと中高生の間で「最も好きなバンド」の第一位に選ばれており、幅広い年齢層から絶大な人気を誇り続けています。
ここにどういった差異があるのかということを自分なりに考察します。両者ともにバンドが結成15年以上という歳月を超えて大きくなり、世間的にもじゅうぶん認知され、音楽的にも、音楽業界における存在感という点でもバンドが「飽和状態」になってしまった今、"何を意識して"バンド活動をするかというヴィジョンの持ち方に大きな違いがあるのです。 L'Arc?en?Cielにも迷走した時代はあり、演奏も作曲もいい加減なやっつけ仕事でしかなかった頃がありました。しかし、商業バンドと揶揄されたジレンマを乗り越え「自分達の仕事は音楽。だからしっかりやる」という意識を持つようにしたことで、L'Arc?en?Cielというバンドの地盤は揺るぎないものとなったように見えます。ライブを見に行って受ける彼らの印象は、まさに「いま仕事してます」といった感じなのです。彼らの姿勢は、ロックミュージシャンとしては模範的とは言えないかもしれませんが、それはそれでショーとして成立しており、見ている側としてもちゃんと楽しめます。これは音楽業界で生き残るためには大変賢いやり方であると考えられます。仕事と割り切り、魅力的な曲を作り真面目にライブを行うだけで、ファンは安心し、ちゃんとついてくるのです。
このように「仕事として」音楽を続けることを選んだL'Arc?en?Cielですが、一方のGLAYには、何故まだGLAYというバンドを続けているのかが明瞭でないという問題があるように思えます。ロックとは本来ならば、仕事というより、自らの中にあるフラストレーションを音楽によって発散し社会に抵抗するという意味合いが強いジャンルですが、バンドが売れて経済的に安定すればそのようなエネルギーは次第に小さくなっていきます。そうなった時点で「仕事」と割り切ることができたL'Arc?en?Cielに対し、GLAYは未だに反骨精神でロックをやっているのか、仕事だからやっているのかがはっきりしないのです。そのため、絶頂期以来の根強いファンはもちろん残っているものの、実際のCD売り上げや新規のライブ動員数に繋がる若い年齢層へのアピール度が薄いと言えます。多くのバンドは、「売れてフラストレーションが満たされた」という時点で解散してしまうものですが、GLAYは仕事としての音楽を貫くわけでもなく、かといって解散するわけでもなく、不明確な方向性の中でなんとなくバンドを存続しているだけのように見えるのです。こうした点で、現在の音楽業界で頂点となるか落ち目となるかが決まってしまったと言えます。GLAYの最近の楽曲を聴く限りでは秀作が多く、売れていないのが勿体無いと感じてしまいます。
参考
GLAY
「誘惑(98年)」http://www.youtube.com/watch?v=qlsyos6Xw1k
「way of defference(07年)」http://www.youtube.com/watch?v=renAHl3GR68
L'Arc?en?Ciel
「SEVENTH HEAVEN(07年)」http://www.youtube.com/watch?v=ipNCwEpZzuo
また、GLAYとL'Arc?en?Cielが隆盛した時代にもう一つ大きな勢力だったバンドがLUNA SEAです。彼らのファンはファンクラブの名称でもある「SLAVE(スレイヴ)」という呼称がついており、特にRYUICHIのファンである場合「RYUスレ」、SUGIZOのファンである場合「SUGIスレ」などといった具合に、メンバー別に自称する文化がありました。GLAYやL'Arc?en?Cielと比べると少しアンダーグラウンドな立ち位置にいたLUNA SEAですが、バンドとSLAVE達との結束が強く、またロックに対する姿勢という点でも最も真剣であったという印象があります。その「アツさ」故にメンバー間でのすれ違いが生じ、解散してしまいましたが、最後までロックを貫いたバンドだったと思います。
2007年には「一夜限り」として復活ライブを東京ドームで行い、私にとっては初めて生でLUNA SEAのライブを見る機会となりました。年月を感じさせないタイトな演奏に改めて魅了されたのは言うまでもありません。先ほどの話に戻すと、LUNA SEAは反骨精神の表現としてのロックに最後までこだわり続けようとしたバンドであり、バンドが商業化していくのを許せなかった人たちでした。そのため特にボーカルのRYUICHIがアイドル路線で売り始めたことにメンバーからの反発が起こるなどして、惜しくも解散してしまいましたが、日本にあれだけのパワーを持ったバンドが存在していたということは今も誇ってよいことだと思います。
参考
LUNA SEA 「ROSIER」http://www.youtube.com/watch?v=M6QpDsXeE_I
90年代後半、ヴィジュアル系ロックシーンの円熟期を牽引したのはこの3バンドですが、これらのバンドの陰でより「ヴィジュアル系らしい」人気があったバンドも多数いました。ここでいう「ヴィジュアル系らしい」というのは、見た目はもちろんのこと、早くも「バンギャ」という層を意識してサブカル的な活動をしていたということです。PENICILLIN、ROUAGE、Laputa、MASCHERA等のバンドがその代表といえます。そしてこれらのバンドの活動が礎となり、ついにヴィジュアル系の「黄金時代」とも言うべき絶頂期が訪れるのです。
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