1 創成期
1980年代より、アメリカのハードロックやグラムロックの影響を受けてヴィジュアル系の元祖とも言えるバンドが興り始めたことは前述しました。その代表格はガーゴイルやAION等が挙げられますが、申し訳ないことに私はその時代をリアルタイムでは存じ上げないのです。しかし、個人的な目線ですがそれらのバンドの中でもひときわ異彩を放っていたバンドが筋肉少女帯なので、彼らについて少し書かせていただきます。
筋肉少女帯、略して筋少ですが、1988年に「ナゴムレコード」というちょっと特殊なレーベルからデビューしました。というのも、ナゴムレコードはシュールさを売りにし、サブカル的な側面を色濃く持ったいわゆるイロモノのバンドばかりが集まったようなレーベルだったのです。
音はコテコテのメタルながら、無力な男の悲哀を"俺は高木ブーだ!"と歌った「高木ブー伝説」が有名。発売当初、高木ブーに怒られるのではないかと事務所側が心配したり、クレームの電話などが相次いだりしたそうですが、高木ブー氏本人が「若い人たちが頑張ってるんだからいいんじゃないの」と寛大な態度を示したことで発売が許されたという逸話が後に明かされています。キノコ人間の少女タマミについて歌った「マタンゴ」、アンテナ売りが少女の上に落ちるというストーリーが衝撃的な「釈迦」、三年殺しという技をかけられてなおあざとく行き続けた男の話「イワンのばか」等、大槻ケンヂ(オーケン)独特の幻想的・自虐的な詩世界で多くの「ナゴムギャル」や「ナゴムキッズ」を魅了しました。ギタリスト橘高文彦のお城を建てるような様式美ギターソロは音源でもライブでも圧巻です。目まぐるしいメンバーチェンジを繰り返しつつ解散も経験したものの、06年には再結成を果たし、14年ぶりの武道館公演も成功させています。
解散の後に大ファンになった私としては、筋少を生で見られる機会はないものかと悔しがっていたので、今はブランクを取り戻すかのようにライブに足を運んでいます。客層はおじさまからバンギャまで様々で、そのカルト的人気が持続していることが伺えます。オーケンの小説的な歌詞には、ぎょっとさせられたりホロリとさせられたり、他の作詞家にはない味が詰まっているのです。
ところで08年末の筋少のライブに行ったところ、そのオーケンが興味深い言葉を口にしていました。それは、「ヴィジュアル系40歳問題」。つまり、ヴィジュアル系と言われた筋肉少女帯が40歳という節目を迎える今後、果たしてまだ自分たちはこのまま「ヴィジュアル系」を名乗り続けてよいのだろうか?という葛藤があるそうで、これは同世代のヴィジュアル系バンドマン共通の悩みであるというようなことを言っていたのです。オーケンのことですからもちろん冗談半分ではあるのでしょうが、その日サポートでドラムを叩いていた元LUNA SEAの真矢にも、「ねぇ真矢さん、ボクたちってヴィジュアル系だよねぇ」と不安げに問いかけ、真矢は「もちろんですよ!」と戸惑い半分に返していました。会場からは笑いが起こっていましたが、やれルックス重視だのと揶揄されることの多いヴィジュアル系アーティストにとっては年齢というものが案外重要なのかもしれません。Gacktのように「自分は400歳を超えている」等と逃げてしまえば良いのかもしれませんが。他の同世代バンドマンの意見も聞いてみたいものです。
参考:現在の筋少の正式メンバーは4人構成。ピアノの三柴理は名義上サポート扱い、ドラムもサポートメンバーを使ってライブ等を行っています。
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