3 ヴィジュアル系の音楽性
明確な基準はないとされるヴィジュアル系の音楽性ですが、私なりにその共通点を解釈してみようと思います。写真や映像を見なくても「あ、これヴィジュアル系だな」と解ってしまうのは何故なのでしょうか。
1 サウンド
ヴィジュアル系のサウンドは、前述のとおりルーツはメタルですから、基本的には8ビートを基調としたロックです。
しかし、X以降のヴィジュアル系のサウンドには、ギターの独特の歪ませ方があります。中音を大きめにし、トレブルでシャリシャリとした歪みを出すことがその特徴であり、メタルの重厚で邪悪な歪みとは異なります。LUNA SEAのSUGIZOに見られるように、多くのエフェクターを使って色々な音色を出そうとするギタリストもヴィジュアル系には多くいますが、基本の音はこの中音シャリシャリギターに、伸びのあるクリーンを足したようなものが基本の音作りになります。
次にヴォーカルですが、大別するとギリギリの高音を保って勢いよく歌う「TOSHIタイプ」、細くひっくり返ったような声と喉を潰すようなシャウトが共存する「清春タイプ」、余裕ある綺麗めの声で中性的な美しさを感じさせる「hydeタイプ」の3種類に分けることができると思います。
参考
■TOSHIのヴォーカル:X「WEEK END」
http://www.youtube.com/watch?v=83kKcOX6wpg&feature=related
・TOSHIタイプであるLaputaのaki:「揺れながら...」
http://www.youtube.com/watch?v=vJG5T2C6JsQ
・TOSHIタイプであるヴィドールのジュイ:「エリーザ」
http://www.youtube.com/watch?v=DaavkjVLk3M
■清春のヴォーカル:黒夢「Sick」
http://www.youtube.com/watch?v=SuQa5x-5exM
・清春タイプであるDir en greyの京:「Clever Sleazoid」
http://www.youtube.com/watch?v=rP1oP6rd70w
・清春タイプであるサディの真緒:「Ice Romancer」http://www.youtube.com/watch?v=CVtKqApRiGo
■hydeのヴォーカル:L'Arc~en~Ciel「HONEY」
http://www.youtube.com/watch?v=PYYSfTpFHa8
・hydeタイプであるMALICE MIZERのGackt:「月下の夜想曲」
http://www.youtube.com/watch?v=Ubw7pkbUwvY
・hydeタイプであるDのASAGI:「Dearest you」
http://www.youtube.com/watch?v=d3sUpa12mBM
お聞きいただければ分かるように、どのタイプに属しても共通して言えることは、男声の力強さよりも女性的な魅力を推している点と、どこか苦しそうなまでにしゃくりを多用する点です。このような歌い方をするのがヴィジュアル系ヴォーカルの鉄則とも言えます。
また、ドラムのリズムに頭打ちを多用すること、マイナーコードを重視したメロディが中心になっていることもヴィジュアル系サウンドを形作る根幹となっています。
さらに言うと、ヴィジュアル系バンドの多くがその楽曲作りに意外と真摯な態度で臨み、真面目に音楽に取り組んでいることが挙げられます。外見ばかりを取り上げられがちですが、ヴィジュアル系は音楽でのし上がりたいという強い思いを持ったバンドマンたちの登竜門であるからこそ、技術が確かなバンドが多くいます。そこらのJポップよりよっぽど編曲が凝っていたりします。
2 歌詞・世界観
はてなキーワードには「暗いものばかりではない」とあったヴィジュアル系の歌詞についてですが、果たして本当にそうでしょうか。私は退廃的な世界観こそがヴィジュアル系の根底にあるものだと考えます。なぜなら、ぱっと聴く限りでは明るい歌詞のようでも、その前提が必ず病んでいるのがヴィジュアル系だからです。具体例を挙げながら検証していきます。
ヴィジュアル系の中で明るいと言われがちな曲について考えてみます。例えばメロディの明るいcali≠gariの「ブルーフィルム」という曲ですが、「青春が死んで」「言葉もなく打ちのめされて」等と歌っているように内容は悲哀に満ちています。PIERROTの「HUMAN GATE」にしても、「誰もが同じだけの苦しみ背負いながらそれでも笑顔見せている」と、聞き手が"自分は他人より大きな苦しみを抱えている"と考えていることを前提として歌われています。最近のものでは、ムックの「謡声-ウタゴエ-」も「生きる価値もないようなこの世界」「汚れを知らぬ純粋無垢が尊いだなんて嘘だろ」と痛烈な社会批判を浴びせています。GLAYの「サバイバル」のように底抜けに明るいように思える曲も、実は現代社会の混迷と、そこで生きる若者の健気さを歌っているのです。
このように、ヴィジュアル系の歌詞の一大コンセプトは聴く者の傷を抉ることです。よって、ヴィジュアル系を好むということはある意味での自虐とも言えるのではないでしょうか。
参考
「ブルーフィルム」http://www.youtube.com/watch?v=Cj3dPHrC4ac
「HUMAN GATE」http://www.youtube.com/watch?v=7QSC5neEavY
「謡声-ウタゴエ-」http://www.youtube.com/watch?v=Zl8iHHxdOYM
「サバイバル」http://www.youtube.com/watch?v=N_Qoe2Wstic
ただし、最近のオサレ系のバンドの中には、歌詞に深い意味合いを持たせず、明るさだけで押していくものもあります。
参考
「愛らシーサー」(シリアル⇔NUMBER)
http://www.youtube.com/watch?v=Ojm4cGJV4Q4
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