2 ヴィジュアル系の歴史の概要

ヴィジュアル系は1980年代初頭から興り始めたと言われます。しかしその時代のバンド(ガーゴイル、AION、筋肉少女帯等)は音楽性としてはヘヴィメタルの要素が強く、本格的な「ヴィジュアル系」ミュージックの始まりにはこの頃はまだ至っていません。ルックスはといえば、男性が化粧をしてロックを歌うという意味ではグラムロックの祖であるDavid Bowieまで遡ることができ、またMotley ClueやKISS等のLAメタルの影響を受けていたとも言えるので、まだ日本独自の「ヴィジュアル系」と呼べるものではなく、状況としては海外からの波及があったという程度ではないでしょうか。

参考
【左】David Bowieの初期アーティスト写真
【右】LAメタルの雄、Motley Clue
 参考:AION。雰囲気が似てます

参考:youtubeより 筋肉少女帯のライブ。かなりメタル色が強いです
http://www.youtube.com/watch?v=a8vaRgbwee0


 その後いよいよXの登場となります。Xは1982年結成、1989年にメジャーデビューを果たします。Xの爆発的な人気によって「男性が化粧をしてやるメタル」の認知度が日本でも高くなったのです。これがいわゆるバンドブームの火付け役となりました。

 XのYOSHIKIはEXTASY RECORDSというインディーズレーベルを率いていました。このレーベルからはGLAY、LUNA SEAが輩出され、後のヴィジュアル系シーンに大きな影響を及ぼすことになります。このあたりのバンドが、海外のメタルの様式でないヴィジュアル系独特の音楽性・世界観を作っていったと言えます。
 GLAYやLUNA SEAと同時期の1990年代前半に注目を浴びたバンドにL'Arc〜en〜Cielがあります。今でこそ「俺らはヴィジュアル系じゃない」と頑なに言い張る彼らですが、当時の写真を見るとかなりお化粧なども濃く、まず最初はルックスに惹かれて、という理由でファンになる人も数多くいました(私のように)。L'Arc〜en〜Cielに関してもその音楽にメタルの要素はほぼ消えており、GLAY・LUNA SEAとともに日本独自のヴィジュアルロック文化を作っていったバンドと言えます。

参考:初期のラルクはこんな感じでした。
 

 その後、1997年にSHAZNAの「Melty Love」、MALICE MIZERの「au revoir」といったシングルが大ヒットを飛ばし、いよいよ「ヴィジュアル系」という言葉も一般的に認知されていきます。この90年代後半は今も語り継がれるほどのヴィジュアル系黄金時代であり、「ヴィジュアル系四天王」と呼ばれるバンド等、数多くのバンドが生まれヒットを生み出しました。
 この時期はヴィジュアル系に特化したレーベルおよび音楽番組であるBreak Outがヒットした時代でもあります。この時代に主にバンギャ活動をしていたヴィジュアル系ファンのことを「ブレイクアウト世代」と呼ぶこともあり、私もその一人です。

 しかし、2000年のLUNA SEAの解散を筆頭に、21世紀に入る頃から次第にバンドブームは影を潜めるようになり、他のバンドも解散や活動休止が相次ぎました。GLAYも99年のGLAY EXPOという大規模コンサートをピークに曲が大ヒットすることはなくなり、MALICE MIZERからはGacktが脱退しソロアーティストになりました。その他のヴィジュアル系バンドも世間からは飽きられ一部のマニアにしかウケなくなっていきました。私もJanne Da ArcとPIERROTのライブに通う程度(といってもかなり頻繁でしたが)で、新しいバンドを発掘しようという気力はなくなっていました。
 こうして一旦ヴィジュアル系は下火になったとはいえ、Dir en greyや、もうすこし若い世代だと蜉蝣やムック等、さらに若くなるとナイトメア、ガゼット、シドといったバンドは地道な活動を続けていました。根強いファンが彼らを支えていたのです。バンド活動を新しく始めようとする場合にも、普通のバンドをやるよりヴィジュアル系をやったほうがとりあえずファンがつく、という理由で次々とバンドが結成されては散っていったのもこの頃です。
 また、2001年にbaroqueが登場したことにより、今で言う「オサレ系」(ヴィジュアル系の分類のひとつ。後述)の基礎ができあがってきていました。

 参考:「オサレ系」の元祖baroque。登場した時は衝撃でした。

 そして2005年頃より、完全にアンダーグラウンドだったヴィジュアル系が再び脚光を浴び始めました。これは「オタク」が市民権を得るようになったことと関連していると私は見ています。ジャパニメーションが世界で注目を浴び、秋葉原が観光地と化してゆく中、アニメやマンガと同じくアングラな文化だったヴィジュアル系のファンも、胸を張って「ヴィジュアル系が好きだ!」と公言出来る風潮になっていったのです。バンギャの中でも「咲き」や「逆ダイ」といったライブにおける新しい文化が生まれ始め、シーンは熱くなっていきます。
 現在のヴィジュアル系の流行を「第二次ヴィジュアル系ブーム」と呼び、最近のヴィジュアル系バンドのことをまとめて「ネオヴィジュアル系」と呼びます。先程「地道に頑張っていた」と申し上げたバンドや、12012、アリス九號.、彩冷える、D、heidi.などがこれに当たります。バンドの結成から解散までのサイクルは第一次ヴィジュアル系ブームの頃と比べるとかなり目まぐるしいものとなっていますが、次々とバンドが勃興しファンを獲得してきています。

 ヴィジュアル系の歴史の概要としてはこんなところでしょうか。次に、ヴィジュアル系バンドの音楽性について考察したいと思います。

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